Italia「もうひとつの日常」


 さて、着いて早々に見習い(インターン)の書類や所定の手続きを済まし、早速次の日から工房に通い始めました。工房も街と同じく初めての場所ではないので、私を待っていたのは、予想以上の再会の嵐。

 通りや近所付き合いが密なのも、イタリアの特徴かもしれません。日本の商店街みたいな感じで。
同じ通りに住む人やそこで働く人はみんな知り合いで、あいさつを交わし、立ち話をしたり。どこの国でも、井戸端会議的なものですね。
 ただ、同じようにおっさんたちが集まって話してるのに、日本よりかわいらしく見えるのは不思議です。。外国人から見たら日本のおっさんたちも、かわいらしいのでしょうか…

 前回工房に通っていた頃から2年経つというのに、ご近所の人たちはみんな覚えていてくれて、騒ぐほどのことではないのに「前いたあの子が帰って来たよ!」と、おっさんたちが次々と、会いに、というよりのぞきに来たりして、まるで動物園のパンダのような気分。日本人がインターンで工房に来ることはまったく珍しいことではないのですが。。
 
 イタリア人が、というかフィレンツェ人がというか、この人たちは本当に、言うことの9割は冗談なんじゃないか…というくらいに、年中冗談ばかり言い合っていて、真に受けたらこちらがばかみたい、というシーンが多々あります。

 2年前も最初慣れるまでは、彼らのふざけている意味が本気で分からなかったり、ちょっとまじめに傷ついたりしていましたが、そのうち慣れて言い返したり、全く気にしなくなりました。
が。 何しろそんな環境も久しぶり。久々のパンダの気分にはさすがにちょっと疲れたり。

 さらに職人という層の彼らの会話は、いわゆる俗語やフィオレンティーニ独特の言い回しとかに溢れています。なので、日本やイタリアの語学学校でそこそこ勉強してきた私にも、時にはさっぱりわからない。そんな状況は今も昔も変わっていませんが、彼らに悪意がないことは分かっているので、笑って言い返せる自分であろうと思います…


 こちらに着いてから時差ぼけはなく、次の日からまったく普通の生活が始まりました。
日本で仕事に行くときと同じように、目覚ましをかけて、朝起きて、支度をして、日本にいるときと同じ音楽を聞きながら、徒歩で出勤。イタリアにいるのに、行動のすべてがきわめて日常的で、そのことが改めて不思議だったり。

 東京の生活とはまったく切り離された、でもきわめて日常的な生活がここにもあって、2つの世界を行き来しているような感じ…あいだに2年という歳月があったにもかかわらず。

 きっと、もっとたくさんの国を股にかけて仕事をしている人や活躍している人は、世界中にいくつもの日常をもっているんでしょうね。
 今のところ、私にとっては、2つでせいいっぱいのようです。

部屋からの景色。まさに、「眺めのよい部屋」☆